顔のトレーニング

はい、右見て、そのまま止めて。今度は左見て!顔は動かさない!!

 

顧客の一人である美容家が私の顔をしげしげと眺めてから、こう言ってきた。
「家具さん、最近老けてきてるわよ」
「そうですか。ですが年相応ということでしょう」と返した。が、彼女はやれやれといった感じで少し眉をひそめてこう言う。
「今ならまだ間に合うわ。頑張りなさい」

 

頑張るとはいっても具体的にどう頑張れというのだろうか。その疑問をぶつけると、彼女は笑みを浮かべて「私の言う通りにしなさい」と強めに言い切り、そして冒頭の目の運動の指導が始まった。

 

10分ほどマンツーマンでの指導をしてもらったところ、運動直後と同様のスッキリした感じがあった。その場所が顔限定というのは初めての経験でなんだかおかしかった。

 

「これを毎日3週間続けてくださいね」と美容家。有無を言わさぬ迫力で、私もこういった強引さを見習いたいと思ったが、キャラじゃないなと気づく。

 

言いつけを守らないとまずいことになるという予感から、1日10分顔を鍛えて三週間。奥一重になっていた目蓋が二重に戻りかけている。顔のむくんだ感じも近頃はあまり感じない。これが成果だろう。

 

来週、美容家の顧客と会うのだが、さて彼女はなんと言ってくるのだろうか。